まちと田舎の交差点 CROSS通信 第9号 2004年1月11日発行(第8号12月25日発行を一部修正)

(1面)

葛飾区小菅一丁目乗合タクシー

「さくら号」の視察に行ってきました

 十二月十一日、通信6号でも取り上げた乗合タクシーの事例を調査・研究するために東京都葛飾区役所を訪ねた。応対してくれたのは都市計画課の吉村さん。大変丁寧にご教授いただきありがとうございました。
 葛飾区小菅一丁目では平成八年にバス路線が廃止され、公共交通不便地域を生み出すことになった。路線バスが撤退した地域なので既存のバス路線の経路変更や新規路線運行は考えられないため、新規の運行方法を導入せざるを得ない。そこで、@小型バスの運行委託A乗合タクシーの運行依頼B小型バスまたは乗合タクシーの借り上げ方式の三つの検討を行い、需要量・コスト等から「乗合タクシーの運行依頼」を選択。運行主体は「運行事業者」とし、葛飾区は運行経費の不足分を運行事業者に補助するものとした。
 車両は車椅子用のリフト付き十人乗りワンボックスタイプを採用、さくら号の愛称で親しまれている。
 小菅一丁目地区とJR綾瀬駅を結ぶ循環ルート(四キロ)を七時から十九時三十分まで、十分〜三十分間隔で運行している。料金は大人二百円、小人百円、一日平均の利用実績も当初一三二人だったものが現在一八二人、事業者への補助額も減少傾向にある、との説明でした。
 次に綾瀬駅に行き「さくら号」に一周四キロ乗車してみた。実際に乗ってみるとこのあたりの道路は大変狭いことがわかる。しかし、車両が小さいから狭い道でも問題ない。この乗合タクシーによる運行方式は車両が小さいが故に運行ルートや乗降場所、便数の自由度があり、行政やタクシー会社の負担が少なくて済むというメリットもある。
 綾瀬駅では足立区によコミュニティバスも運行されており、駅への自家用車の送迎が減り、駅周辺の混雑緩和にもつながっている。このあたりに大網駅周辺でも参考になるヒントが隠されている。
 少ない予算でよい住民サービスをしていくかが町の課題である。


(2・3面)
12月議会一般質問より抜粋 
通学路の安全について
―通学路には一般の道路以上により高い水準の安全対策が求められると考えます。通学路に対する我が町の安全基準をお聞かせ願います。
教育委員会管理課長
 通学路は各学校とPTAが協議して設定している。設定にあたっては地域の実情をふまえ、歩車道の区分のある道路、車両の通行量の少ない道路、見通しの良い道路、横断歩道、信号機のある道路を設定するようにしています。
―信号の設置により、交差点が渋滞したり、その信号に接続している道路の交通量が増えて危険度が増すなどの可能性がある場合、一定期間簡易信号などを設置して交通実験をする必要があると思うが
生活環境課長
 簡易信号機の設置については東金警察署と協議してみます。
交通需要管理について
―自動車の増大に伴い、交通渋滞や大気汚染など車社会の弊害が社会問題となるなか、近年、いくつかの自治体でTDM・交通需要管理、または交通需要マネジメントと呼ばれる手法が提唱されております。従来の交通行政はどちらかといえば現状追随で、例えば車が多くなったから駐車場を作ろうとか、狭い道を拡幅しようとか、現状の自動車の量的規模を前提にした対処療法的な施策が中心でした。それに対し、TDM・交通需要管理という手法では自動車の効率的利用や自転車や公共交通への利用転換など、交通行動の変更を促して発生交通量そのものを抑制するなどの原因療法的な取り組みを行うものです。
 我が町でも大網駅へ向かう道路及び駅前ロータリーの渋滞が大きな問題となっております。特に雨の日などはいつ事故が起きてもおかしくない状況であります。また、バス路線の廃止・縮小等による公共交通不便地区が増え、一方で高齢化に伴い住民の移動手段が狭められている現状があります。このような中で対処的な施策は一刻も早く必要と思われますが、将来的にはTDM・交通需要管理の視点を取り入れた行政施策が必要と思われます。また、交通需要管理を進めるためにもまずは大規模な交通需要調査が必要と思われます。町当局としてのお考えをお聞かせ下さい。
企画政策課長
 大網駅を中心とした朝夕の交通渋滞について解決すべき問題であると強く認識している。解決方法の一つとして交通需要管理があることは理解している。町としても現在の大網駅を見てみますと交通需要管理が必要と思われますので今後関係各課を含めまして検討課題として取り組んでいきたい。
巡回バスについて
―先の議会で陳情が採択された巡回バスの導入について、路線の選定等交通需要管理の視点を取り入れられないか。
企画政策課長
 先般採択された陳情は公共交通の空白地域を解消するためにということで、交通需要管理とは若干異なると思われる。
 なお、巡回バスについては必要性は認めているものの、補助金等が得られないことや費用対効果がみとめられないなど財源確保が大きな課題で今後のさらなる調査と研究が必要である。
自転車利用の促進について
―自転車利用の促進は自動車の発生交通量抑制につながると思われます。そのためにはサイクリング道や駅前駐輪場の整備が考えられます。今年から駅前駐輪場の登録方式が変更になり、年度毎の登録にしか一年割引の適用がなくなりサービスの後退ではないか。また、駐輪料金は高いのではないか。永田駅の駐輪場を整備したらどうか。
生活環境課長
 駐輪料金は茂原市・千葉市を参考にして若干安くして設定してある。永田駅駐輪場は当面現状のままでいく。
大網駅前をバリアフリーに
―大網駅周辺は大変段差が多く、特に駅前ロータリーから千葉銀行へ抜ける道など大変ひどい状態であります。それに伴いお年寄りや車椅子・ベビーカーなどの交通弱者のみならず一般の歩行者・自転車にとっても通行しにくい現状になっております。大網駅周辺のバリアフリー化は福祉的な視点からも必要と思われますが、交通需要管理の視点からも有効と思われますがお考えをお聞かせ下さい。
都市整備課長
 大網ハイツ前の急勾配及び段差の解消につきましては現在国が進めている両総用水の暗きょ化に合わせて平成二一年度をめどにお年寄りや障害者が安心できる歩行空間を確保していきたいと考えています。
 大網駅前広場についてもバリアフリー対策に配慮した整備を考えたい。
永田駅整備について
―永田駅の近隣住民が大網駅を使わずに永田駅を使うことは、大網駅への集中を緩和することにつながります。またこれは永田駅だけには限りませんが、駅までの交通手段を自動車から徒歩や自転車に変更することも交通需要管理の方策の一つと考えられます。大網駅ではエレベーター・エスカレーター設置により使いやすくなりました。永田駅もより使いやすくする必要があると考えますがいかがお考えでしょうか。第三次総合計画で橋上駅舎化が考えられているが、現ホームに屋根を付ける、現駅舎にスロープを付ける、東口に無人の改札口をつくる等の簡単な余りお金のかからない方策があるのではないか。
企画政策課長
 JR東日本に問い合わせたところ、現在の利用客数からJR単独での駅舎整備の実現性は低いとのこと。引き続きJR東日本に要望活動を継続して行っていきたい。
瑞穂中学校建設問題について
―現在、電磁波についてのWHO世界保健機構の基準待ちということですが、瑞穂中学校建設は一刻を争う課題だと考えます。私個人といたしましては高圧線の下に学校を建設することは大変不安を感じるものであります。例えば食品添加物でも何年も経ってから発ガン性があったというようなこともあります。町としても建設を先延ばしするのではなく、他の場所への建設を決断されてはいかがかと思いますがご見解をお聞かせ下さい。
堀内町長
 WHOからの明快な回答が平成一七年に出る。仮に安全が確保できたら(その場所に)つくっていくべきだと認識している。財源的な問題もあります。


(4面)
自衛隊のイラク派遣をめぐる二つの意見書
 自衛隊のイラク派遣をめぐる二つの意見書が十二月議会に出された。ひとつは環境平和NGO「ネットワーク・地球村」と在町個人の連名での請願書「イラクへの自衛隊派遣の中止を求める意見書に関する請願書」、もうひとつは岡田憲二議員提出による発議案「慎重な自衛隊のイラク派遣を求める意見書」の二つである。ともに政府に対して町議会としての意見書を提出することを求めるものだった。
 前者の請願は総務委員会に付託され継続審査となり、事実上の不採択となった。一方後者の発議案は内山清議員、黒須の反対質問、中村正議員の反対討論があったものの賛成多数で採択された。
 両意見書は表題からはよく似た内容の意見書かのように思われるが、内容をよく読むと全く違うものである。前者の請願は自衛隊の派遣にはっきりと中止を求めるものである。それに対し後者の発議案は自衛隊派遣を「必要不可欠な派遣」とした上で慎重な検討を求める内容である。小泉首相もまったく同じように「慎重な判断」をすると言っている。今まさに自衛隊が派遣されようとする中での政府と同じ「慎重」という言葉を使っての発議案は政府のこの派遣に対して賛成なのか反対なのかはっきりしない。むしろ現状を追認するにすぎないものだ。
 自衛隊派遣そのものに対しても多くの国民が反対をしている。米軍の後方支援をすることは憲法で禁じられている集団的自衛権の行使そのものだ。イラクの大量破壊兵器も見つかっていないなかで戦争の大義すらあやしい。ましてや「戦争状態が続き」「戦闘地帯と非戦闘地帯とに分けることのできない」イラクへ今この時期に自衛隊を送ることについてはほとんどの国民が反対をしている。
 地方議会の使命のひとつとして住民の生命と安全を守ることがあるのは言うまでもない。本町にも自衛隊員やその家族の方々が不安な日々を送っていることと思われる。
 だからこそ政府の立場に立っての「慎重な」派遣を求めるのではなく、国民・住民の立場に立って、戦争状態の続くイラクへ自衛隊を送ることを政府に見合わせるよう発していくのが本来の地方議会の役割ではないのか。(※ついに陸上自衛隊に派遣命令がだされた。イラクの情勢は依然として危険な状態が続いている。政府はただちに派遣を撤回するべきである。)