違法公金支出金返還請求事件意見陳述書

平成20(2008)年7月1日

千葉地方裁判所民事第三部 御中

原 告(選定当事者) 大  村  敏  也
同       黒  須  俊  隆

 はじめに今回意見陳述の機会を与えて頂いたことに、裁判長をはじめ関係各位に感謝申し上げます。

 私たち住民がなぜ訴訟に至ったのかについて、その思いをこれから述べさせていただきます。

 平成18年5月に大網白里町職員が収賄容疑で逮捕されました。この事件は、平成16年に実施された大網白里町汚水処理施設等維持管理業務の指名競争入札及び平成18年の随意契約をめぐり、下水道課職員が東総施設管理鰍フ受注のために便宜を図り、見返りに現金を受け取ったというものでした。

 この事件の公判で、平成3年に大網白里町に汚水処理施設ができて以来、当初から東総施設管理鰍ヘ、大網白里町下水道課の職員を飲食やゴルフなどで接待を重ね、その結果として維持管理業務を15年間にわたり独占してきたことが明らかにされました。

 収賄裁判の判決では、「東総による談合を容易にするなどして高額での受注を導き、その見返りとして本件だけでも合計70万円を得ている」と認定されています。また贈賄側判決では、「東総施設管理の落札価格等に照らせば、本件各犯行によって、大網白里町による指名競争入札が形骸化したことは明らかであり、町民の負担を徒に増大させたことも否定できない」と指摘されています。

 この事件は、贈賄側も収賄側も事実関係を大きく争うものではなく、1審で確定し、元職員には執行猶予付きながら懲役2年の重い刑が科せられました。

 これだけ重大な内容を含む事件が起きたにも関わらず、大網白里町は形式的な調査しかせず、収賄事件の事実経過と再発防止策等検討結果報告書では、「職員(公務員)としての自覚の欠如が最大の問題点」とし、元職員の倫理観の問題として矮小化し幕引きをはかりました。

 町は、事件後、談合を指摘された新聞報道を受けて、入札参加業者から聞き取りを行いました。この聞き取り自体が大変杜撰なものではあったものの、入札が不正に行われたと十分に認識できる内容でした。しかしながら、町はこの聞き取りを公正取引委員会に報告するだけで、入札参加業者から設計書を提出させるなどの詳しい調査を一切行いませんでした。さらに2度目の談合報道で再度入札参加業者から行った聞き取り調査は、公正取引委員会にすら報告をしていません。

 入札参加業者に大変疑わしい内容や、不適切な内容があったことを町はつかんでいたにもかかわらず、積極的な調査をしなかったのです。町長をはじめ関係職員の重大なミスや様々な不適切な処理、対応も明らかになっています。

 その一例として、入札価格の積算に必要な設計図書の貸出を、贈賄業者である東総施設管理活ネ外の入札参加業者7社は受けずに入札が行われていたことが判りました。

 疑わしいことがあれば、調査をすることは行政の義務。本来であれば自治体自らが率先してやるべきことです。

 原告らは、議会質問や住民監査請求などを行い、再三にわたり問題を指摘して参りました。にもかかわらず詳しい調査を行わず、談合どころか事件の全容すら隠蔽しようとする町行政の体質は、町長堀内慶三被告の体質そのものと言わざるを得ません。

 この間、被告の怠慢を埋めるべく、原告らがこつこつと調査を重ねた結果、談合の事実及び町が損害を被った事実はさらに明らかになったと確信しています。今後法廷で詳しく立証していく予定です。

 つい先日、6月27日に、被告堀内慶三町長が企業長をつとめる一部事務組合「山武郡市広域水道企業団」の幹部職員が競売入札妨害容疑で逮捕されました。

 贈収賄の背後にある談合に目を背け、入札に不正があったことを認めないかぎり、このような事件はこれからも続くでしょう。

 今回の裁判で、町民の被った損害を回復させる事はもちろんですが、入札に不正があったことを町に認めさせ、これまでの入札制度の不備を正していくことが、私たち原告にとって実現させたい大きな思いの一つです。

 地方自治法第2条14項に「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」という規定があります。重ねて言いますが、住民の税金を談合により大きく無駄遣いされたこの事件に対して、これまで町長のとってきた態度は行政の怠慢と言うほかありません。この裁判を通してこのことを明らかにしていきたいと考え、意見陳述といたします。